小川由秋著『清盛と後白河院』などを読了

令和5年4月13日から16日までの期間に以下の本を読み終えた。いずれもkindle版である。iPhoneのVoiceOver機能で聴いた。

1.小川由秋著/清盛と後白河院(PHP研究所、2012年)

2.苫米地英人著/明治維新という名の洗脳(コグニティブリサーチラボ、2016年)

3.石原千秋著/あの作家の隠れた名作(PHP研究所、2009年)

4.伊東玉美編/宇治拾遺物語(KADOKAWA、2017年)

5.浜崎洋介著/三島由紀夫 なぜ、死んでみせねばならなかったのか(NHK出版、2020年)

6.ヘンリー・スコット・ストークス著/英国人記者が見た戦勝国史観の虚妄(祥伝社、2014年)

〈メモ〉

1.小川由秋著/清盛と後白河院(PHP研究所、2012年)

歴史小説。「鹿ケ谷の謀」と題された章で平滋子が病でこの世を去る場面が描かれている。平家の人々の不安な心が描かれており、印象的だった。この出来事の後に清盛が後白河への不信とも取れる言葉を妻時子に発している。

また、ほかに、俊寛について書かれた部分も興味深く読んだ。流された鬼界ヶ島に一人残された俊寛。一人彼が残ることになった理由として、清盛の言葉が示される。以下引用。「特に目を掛け、恩恵をこそ与えてきた(後略)」、引用終わり。時子に対し語られた清盛による俊寛についての言葉の一部である。能で描かれる俊寛はブログ執筆者の耳には大雑把でいい加減な人間に映っていた。鈍感だったのか、実際に忘恩の人だったのか。繰り返しまた能は聴くだろうし、歴史小説に異なる顏で登場するのを読むことになるのだろう。楽しみである。

2.苫米地英人著/明治維新という名の洗脳(コグニティブリサーチラボ、2016年)

歴史認識という言葉には二十数年というもの、頻繁に接してきた。ブログ執筆者自身も世間話で用いることが多かったと思う。この語は政治的で、今現在はやはり使う際は抵抗を感じる。だが、やはり考えなくてはならないことは無数にあるのだろう。そのテーマの一つがこの明治維新というものである。明治維新のとらえなおしというテーマの本はこの十年ほ、ずいぶん耳にした。それらの話題を多く耳にしたのはブログ執筆者の経験であるが、世間でも関心が高まっているのかなと考えた記憶がある。本書は、萩藩の会計と現在の国の特別会計の例を挙げ、明治維新と呼ばれる歴史の事件はその時点で終わったわけではなく、現在もまだ継続しているのだと語る。

以下、印象に残った部分二点。(一)アーネスト・サトウの言動。中でも、第5章の中に書かれたエピソード、1866年、英国公使付き通訳官であった彼が朝鮮語を勉強しており、それについて勝海舟に語ったことが非常に興味深く感じられた。曰く、(以下引用)「フランスがいま朝鮮を狙っていて、彼らに対抗するためにいま朝鮮語を学んでいる。たぶん私の次の赴任地は朝鮮半島になるだろう」(引用終わり)。(二)(一)と関連することだが、「岩倉使節団の謎」と題されたパートで提示される、政府のトップを含む100人以上の岩倉使節団の長期間の外遊はなぜ行われたのかという疑問。ブログ執筆者も今まで岩倉使節団についての文章を読むたびに首をかしげていたが、なぜこれが行われたのか、と深く考えたことはなかった。本書では、征韓論を合わせて考えることで、この使節団の外遊の意味として一つの可能性を示している。

「(以下引用)実をいえば、たったひとつだけ確かな成果が上がっていた。

それが日本を征韓論に傾けたことである。(引用終わり)」

とても興味深く、また、納得のできる論であった。今後またこの周辺についての本を読んでみたいと思う。

3.石原千秋著/あの作家の隠れた名作(PHP研究所、2009年)

タイトル通り、この本では有名作家のあまり知られていない「名作」が紹介される。「名作」について、前書きで次のような一文があった。「(以下引用)これらを「名作」にするのは読者である。(引用終わり)」。存在し続ける作品たちが読者に与えるものは、読者の読みかたによって確かに異なるだろう。

著者石原千秋の本は、以前作文についてのものを読んだ。その著作の中で夏目漱石の作品について書かれた部分があり、とても楽しく読んだ。漱石作品が含まれており、著者の作品紹介を読みたかった、というのが今回この『あの作家の隠れた名作』を読んだ理由である。本書では『趣味の遺伝』についての解説が収録される。

〈石原千秋著『生き残るための作文教室』を読んだ記録を含む記事〉

石原千秋著『生き延びるための作文教室』などを読了

4.伊東玉美編/宇治拾遺物語(KADOKAWA、2017年)

説話集『宇治拾遺物語』から序と34の話が選ばれ、訳と解説がつけられた書籍。不思議な話が多く、面白かった。「はじめに」に「(以下引用)『宇治拾遺物語』は鎌倉時代前期に成立したと考えられる、編者未詳の説話集である。(引用終わり)」とある。当時の人々の考え方、行動を楽しく読んだ。特に、人々の超自然的な存在との関わり方が面白く感じられた。超自然的な存在は存在するのがある意味当然といった風情で語られており、現代人であるブログ執筆者にはユーモラスに思えるのだが、当時の人たちはこれらの説話をどう読んだのか、またこれも興味のあるところだ。

道命の法華経読経について語られる一話、三十話の「唐の卒都婆に血が付いた話」、窮状にあって清水寺にお参りする女が頂いた御帳を返したりまた頂いたりと繰り返す一三一話、日蔵が鬼と遭遇してその話を聞く一三四話、安倍晴明と藤原道長の登場する一八四話、孔子がさんざんに盗賊に論破される一九七話などが印象に残った。

5.浜崎洋介著/三島由紀夫 なぜ、死んでみせねばならなかったのか(NHK出版、2020年)

著者は本書において、三島由紀夫の思想を、主に彼自身の文章、言葉から読み解いていく。著作の読解、その背景の解説など、興味深く読んだ。

著者は1978年生まれ、文芸批評家。

6.ヘンリー・スコット・ストークス著/英国人記者が見た戦勝国史観の虚妄(祥伝社、2014年)

タイトル通り、第二次大戦、大東亜戦争をどう見るかということが扱われる書籍。著者の立場はこのタイトルに「虚妄」とあることでわかるように、連合国に正義があるとの歴史観に異議を唱えるもの。西欧による植民地政策について考えることなく先の対戦について語ることは不可能だとブログ執筆者も思う。

東京裁判についての部分も興味深いものであったが、ほか、三島由紀夫、ロスチャイルドとの交流について書かれた部分も印象に残る。

三島のクーデターの際の檄、その中で「傭兵」という語を用いていることを著者は指摘し、注意を促している。これは、金銭によって仕事をする存在であり、「(以下引用)兵としてプライドがあったら、そんな侮蔑を許せない。(引用終わり)」と著者は言う。

1964年、著者は26歳という年齢でフィナンシャル・タイムズの初代東京支局長となった。

解説は著者ヘンリー・ストークスの友人であるという加瀬英明。この解説中にトルーマンの発言が引用されているのだが、酷いものだと思った。以下引用。「獣を相手にする時には、獣として扱わなければならない」引用終わり。この発言は日本への二度の原爆投下の後のホワイトハウスにおいてのもので、記録に残っているとのことである。その際に彼は笑みを浮かべていたそうだ。今後、この発言に関する書籍を読みたいと思う。

(敬称略)

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