原田伊織著『明治維新という過ち』などを読了

令和5年5月28日から6月9日までの期間に、次の本を読み終えた。『明治維新という過ち』、『仙境異聞』、『太平天国 第二巻』、『ツキを呼び込む華僑商法100の法則』の四冊はkindle版をiPhoneのVoiceOver機能で聴いた。

1.原田伊織著/明治維新という過ち 日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト 完全増補版(講談社、2017年)

2.長山靖生編/ロマンチック・ドリンカー 飲み物語精華集(彩流社、2019年)

3.平田篤胤著、今井秀和訳・解説/天狗にさらわれた少年 抄訳仙境異聞(KADOKAWA、2018年)

4.藤井孝一著/週末起業(筑摩書房、2003年)

5.篠田真由美著/翡翠の城(講談社、2001年)

6.玄侑宗久、和合亮一、赤坂憲雄著/被災地から問うこの国のかたち(イースト・プレス、2013年)

7.陳舜臣著/太平天国 第二巻()

8.マシュー・サイド著、竹中てる実訳/きみはスゴイぜ! 一生使える「自信」をつくる本(飛鳥新社、2020年)

9.今邑彩著/大蛇伝説殺人事件(光文社、1998年)

10.出口保夫著/イギリスの優雅な生活(世界文化社、1997年)

11.江本勝著/水は答えを知っている その結晶にこめられたメッセージ(サンマーク出版、2001年)

12.五井昌久著/空即是色 般若信教の世界(白光真宏会出版本部、1994年)

13.鈴木治雄著/実業家の文章(ごま書房、1998年)

14.松本幸夫著/ツキを呼び込む華僑商法100の法則(パンローリング株式会社、2016年)

〈感想、メモ〉

1.原田伊織著/明治維新という過ち 日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト 完全増補版(講談社、2017年)

現代における所謂「明治維新」像を問い直す著作。強い問題意識、著者は「危機感」という言葉を用いているが、により著されたものであり、このテーマはやはり広く議論されるべきものだと感じた。

先日読んだ苫米地英人の著作『明治維新という名の洗脳』(コグニティブリサーチラボ株式会社)においても指摘されていたが、幕末からの一連の出来事は、2020年代の現在においても政治や経済、教育に無関係ではない(どころか、そこで形成されたシステムが現在なお社会問題として存在し続けている)。

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小川由秋著『清盛と後白河院』などを読了

今まで持っていた徳川慶喜や阿部正弘、勝海舟、西郷隆盛といった人たちの人間像や萩藩や水戸藩などの像がこの『明治維新という過ち』を読むことで更新された。特に強い印象を受けたのは次の二点。(1)赤報隊について。この集団については今までも何かの本で読んでいるはずであるが、本書で指摘されるまでその異常性について考えが及ばなかった。(2)水戸藩について。中でも、水戸光圀の検地についての記事には驚いた。一間を六尺として検地していたとある(当時の一間=六尺三寸)。これにより表向き石高が上がり、二十八万国であるはずの水戸藩が三十六万九千石となる。結果として、「(以下引用)農民は架空の農地に課税されているようなもの(引用終わり)」という状態が起ったとのことである。

2.長山靖生編/ロマンチック・ドリンカー 飲み物語精華集(彩流社、2019年)

飲み物が物語中に登場する文学作品が集められたもの。収録される作家は堀辰雄、立原道造、幸田露伴、小川未明、岡本かの子、芥川龍之介、松村みね子、室生犀星、横光利一、太宰治、北原白秋、木下杢太郎、宮沢賢治、左川ちか、小熊秀雄、大手拓次、高村光太郎、中島敦、夏目漱石。

幸田露伴の『軽井沢』と小川未明の『白い門のある家』、岡本かの子の『グレゴリー夫人訪問記』の三作品が特に面白かった。

岡本かの子の『グレゴリー夫人訪問記』では、アイルランドの描写が印象的だった。積まれたターフ(泥炭)が汽車から見える様子などが語られる。ダブリンからグレゴリー夫人の邸宅への移動は汽車であったらしい。

3.平田篤胤著、今井秀和訳・解説/天狗にさらわれた少年 抄訳仙境異聞(KADOKAWA、2018年)

文政年間に現れた仙境を知るという少年に平田篤胤が様々なことを質問してそれを記録した書物である『仙境異聞』の抄訳。

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(a)平田篤胤らが登場する『顔孕み』を読んだ記録を含む記事

佐藤優著『読書の技法』などを読了

(b)『仙境異聞』に収められている鉄を食する生物についての話が収められている『文豪てのひら怪談』を読んだ記録を含む記事

池波正太郎著『ごろんぼ佐之助』などを読了

「鉄を食う獣のこと」(上記(b)の『文豪てのひら怪談』に収録されている話)、「時の速さと長命の関わり」、「空飛ぶ船」などが面白かった。

4.藤井孝一著/週末起業(筑摩書房、2003年)

会社勤務を続けながら起業をするという選択肢を提示する本。

5.篠田真由美著/翡翠の城(講談社、2001年)

「建設探偵桜井京介の事件簿」シリーズの一作。

一族支配の続くホテルに生じた身内の不和。創業者の娘である90代の女性の住む「碧水閣」の取り壊し計画により争いが表面化する。

物語の導入部で語られる下田菊太郎とフランク・ロイド・ライトのエピソードが面白かった。

6.玄侑宗久、和合亮一、赤坂憲雄著/被災地から問うこの国のかたち(イースト・プレス、2013年)

2011年3月11日の東北の震災。政府の震災対応等に関して三人の話者が語る。

話者の一人、玄侑宗久の語る、アメダスの情報が消去されるという話には驚いた。3月14日の夜あたりから、福島上空の情報が消失するという現象が見られたとのことだった。「大本営発表」は2020年代の今でもよく聞く表現だ。

もう一転、強く印象に残ったのは、復興に際しての増税の案についての玄侑宗久の発言である(第2章の質疑応答部分)。この中で消費税を上げるという案について、否定的な見解を示しており、すでにそのことも考えていてそのうえで反対というスタンスであったようだ。話者の考えの深さが心に残った。

7.陳舜臣著/太平天国 第二巻()

この第二巻では、各地での戦闘が描かれる。太平天国の軍による一般市民の殺戮の場面が印象的だった。組織に対する構成員の葛藤が描かれており、考えさせられた。

洪秀全、楊秀清、新妹李、連理文らが登場する。

8.マシュー・サイド著、竹中てる実訳/きみはスゴイぜ! 一生使える「自信」をつくる本(飛鳥新社、2020年)

成長のためのマインドセットなどについて書かれた本。

「マージナル・ゲイン」という概念について解説される第6章が印象に残った。マージナル・ゲインは「ほんの小さな改善」と訳されている。

9.今邑彩著/大蛇伝説殺人事件(光文社、1998年)

物語の本編は、平成9年9月の松江のホテルのフロントで幕を開ける。宿泊していた東京の画家が姿を消し、その後死体となって神社で発見される。神話などを背景に描かれた推理小説。

神話や民間伝承が登場人物によって語られる。それらの場面が興味深かった。

10.出口保夫著/イギリスの優雅な生活(世界文化社、1997年)

イギリスの生活文化などについてのエッセイ集。

イースト・アングリアに住む著者の友人について書かれた「あるイギリス人の生活」、イギリス人の読書について書かれた「霧と読書の季節」、コーンウォールなどの南イングランドの土地が描かれる「南イングランドの魅力」などが面白かった。

11.江本勝著/水は答えを知っている その結晶にこめられたメッセージ(サンマーク出版、2001年)

水に「良い音楽」や「良い言葉」を聞かせたときに起こる変化に関する話などが記されている。ルパート・シェルドレイクとの会話も本書中に書かれており、興味深く読んだ。シェルドレイクは著者と会う前にこの水の実験について知っており、大いに関心を持っていて、著者は対談中頻繁に質問されたとのことである。

12.五井昌久著/空即是色 般若信教の世界(白光真宏会出版本部、1994年)

般若信教についての講和集。「10 質疑応答」で示された沢庵の歌の解釈が面白かった。

13.鈴木治雄著/実業家の文章(ごま書房、1998年)

著者鈴木治雄は、以前に読んだ品川嘉也の著作『脳活のすすめ』(ごま書房新社VM)においてその読書法が紹介されていた。著者鈴木は、スピーチなどにおいて、何気ない様子で詩や小説からの引用をしていたようだ。そのような引用を加納にしていたのが鈴木の豊富な読書と克明につけられていたという読書ノートであったと品川は推察している。

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萩原栄幸著『個人情報はこうして盗まれる』などを読了

この『実業家の文章』においては、渋沢栄一、武藤山治、金子直吉、藤原銀次郎、小林一三、森矗昶、鮎川義介、野村徳七、伊藤忠兵衛、松永安左エ門、石坂泰三、河合良成という十二人の財界人について書かれた本である。

中でも、松永安左エ門について書かれた文章が面白かった。最近ブログ執筆者が読んだものだと、茶人としての安左エ門が描かれた『豪快茶人伝』(火坂雅志著、KADOKAWA)の印象が強い。松永安左エ門は耳庵という号を持つ茶人でもある。

〈関連記事 茶人としての安左エ門についての記載のある『豪快茶人伝』を読んだ記録を火坂雅志の著作『豪快茶人伝』を読了含む記事〉

安左エ門の事業に関する部分では、太田垣士郎、小林一三、池田成彬、小坂順造、平岩外四といった名があり、興味深く読む。また、安左エ門の尊敬する人物として、その筆頭に福沢諭吉の名が挙がっている。ほか、安左エ門の評価する人物たちの名が列挙されており、これも面白い。山本条太郎、各務鎌吉、大川平三郎らが挙げられる。

14.松本幸夫著/ツキを呼び込む華僑商法100の法則(パンローリング株式会社、2016年)

巻末著者紹介によると、著者は1958年生まれ、東京出身。

著者は般若心経がタイにおいてどのような位置づけであるかなどを調査するため、タイを訪れる。そこで華僑の活動に出会い、彼らに興味を持つことになる。

「1 誰よりも長く働け」、「11 常に進歩を心がけよ」などの章が印象的だった。

(敬称略)

(『ロマンチック・ドリンカー』、『翡翠の城』、『被災地から問うこの国のかたち』、『きみはスゴイぜ!』、『大蛇伝説殺人事件』、『イギリスの優雅な生活』、『水は答えを知っている』、『空即是色』、『実業家の文章』の九冊はサピエ図書館の点字データで読みました。また、『週末起業』は同じくサピエ図書館の音声データを使用しました。点訳ボランティアと音訳ボランティアの皆様、関係者の方々に感謝申し上げます。)

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