ラウル・アリキウィ、前田陽二著『未来型国家エストニアの挑戦』を読了

令和5年3月6日(月)、『未来型国家エストニアの挑戦 電子政府がひらく世界』を読み終えた。kindle版をiPhoneのVoiceOverで聴く。

先日読んだ真壁昭夫と中野信子の対談本である『脳のアクセルとブレーキの取扱説明書』の中で「デジタル政府」について語られている部分があったので、電子政府に関する『未来型国家エストニアの挑戦』を読むことにする。

〈『脳のアクセルとブレーキの取扱説明書』を読んだ記録を含む記事〉

真壁昭夫と中野信子との対談本『脳のアクセルとブレーキの取扱説明書』などを読了

エストニア政府CIO(刊行当時)のターヴィ・コトカによる巻頭の「発刊に寄せて」に、エストニアは人口130万人の北欧の国であるとの紹介がある。続き、面積はオランダやスイスよりも広い、とある。つまり、広い国土に散らばるような状態で人々が生活している状況だということである。これがエストニアが「電子立国(e-country)(本文中表現)」として知られるようになった理由の一つだという。遠隔地に住む人々との情報の伝達を可能にする情報技術は行政の効率化という面で自然な発想であるようにも思われる。

「第1章 首都タリンでの生活」、「第2章 エストニアの歴史、政治、ICT推進の経緯」、「第3章 ICTサービスを支える情報基盤」、「第4章 電子政府サービス」、「第5章 エストニアの将来ビジョン」、「第6章 スタートアップ国家・エストニア」、「第7章 マイナンバー制度への期待」という構成。

第2章の「エストニアのICT戦略」では、独立後にエストニアがICTに資本を集中させることを決定し、国民もその方針を指示したことが記されている。ちなみに、この時に同様に資本を集中させる分野としてバイオテクノロジーが挙げられている。

この方針は刊行当時まで一貫しており、それがこの政策の成功の一因だと著者は考えている。もう一つ、ソ連時代のシステムに執着がなかった、ということも成功の要因として数えられている。

独立当初、学校の建造物の修理よりもコンピューターの導入の方が優先されたとのことである。

すべての学校でのインターネット環境整備を行う主体として、「タイガーリープ財団(現Information Technology Foundation for Education)」が挙げられている。この組織が中心となり、タイガーリープ・プロジェクトが実施された。「先進国を追い越す(本文中の表現)」という意味が込められた名称であり、シンガポールをはじめとした東南アジア国家が想定されたものだという。このプロジェクトは1996年に始まっており、やはりその早さに驚く。

医療、教育など、多方面でICTが用いられたサービスが行われているようだ。ペーパーレスが推進されたことで行政が効率化されたことも記されている。

著者ラウル・アリキウィ(Raul Allikivi)は1979年エストニア生まれ。

著者前田 陽二(まえだ ようじ)は1948年富山市生まれ。

ラウル・アリキウィ、前田陽二著/未来型国家エストニアの挑戦 電子政府がひらく世界(インプレスR&D、2016年)

(敬称略)

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