外山滋比古のエッセイ集『裏窓の風景』をkindleで聴く

令和5年1月31日、外山滋比古の『裏窓の風景』を読み終えた。kindle unlimitedをiPhoneのVoiceOver機能で聞く。(kindle unlimitedの利用は令和5年1月時点)

奥付によると、電子書籍の発行は2022年。初版は2010年発行とある。

エッセイ集である。季節の話題、文房具のこと、著者の思い出など、趣のある文章が収められる。

「岩瀬文庫」、「地震」、「忠臣蔵」、「耳のことば」、「年譜」、「墓地」、「試験問題」、「耳で読む」などが印象に残る。

「岩瀬文庫」は著者が『枕草子』を読もうと岩波の古典体系を手に取ったところ、岩瀬文庫が底本である旨記してあり、そこから子供の時に近くに住んでいた著者の回想が語られるというもの。

「地震」では昭和20年1月の東海地方の大地震についての著者の思い出が綴られる。被害状況、当時の報道の話など、考えさせられる話であった。

「忠臣蔵」では三河吉良の荘の近くで育ったという著者の考えが述べられる。やはり師走は吉良に同情的な人々にとっては面白くないらしい。

「耳のことば」では和歌山の訛りを手がかりに犯人を検挙するというTVドラマを見た著者が感じたことが語られる。バーナード・ショウの『ピグマリオン』が紹介される。

「年譜」では全集などに付される作家の年譜はかつては読むことがなかったのだが、だんだん面白くなってきたということが書かれる。自らのことに引きつけて読むと面白いのだと著者は言う。

「墓地」は雑司ヶ谷の墓地を訪れる話。漱石、鏡花、荷風の墓のことが記される。

「試験問題」では仏文学者河盛好蔵が自分の文章を試験問題で無断で切り刻まれた状態で使用されたと学校に抗議した話が紹介される。

「耳で読む」にはバートランド・ラッセルが耳で読書したという事について著者の考えたことが書かれる。ラッセルは家族に朗読してもらっていたらしい。海外の作家でその習慣を持つ人の話をよく聞く。面白いと思う。

外山滋比古著/裏窓の風景(ディスカバー・トゥエンティーワン、2022年)

(敬称略)

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